今回は、産業用マザーボードの主流であるATX、Micro-ATX、Mini-ITXの3つのフォームファクタの違い、そしてIPCのI/Oモジュールについて詳しく解説しています。
Industrial PCは、以前は産業用コンピューターと訳されており、この言葉を見ただけでは、ほとんどの人が工場専用のコンピューターだと思うでしょう。生産ラインの設備は別として、金融機関のATM、コンビニエンスストアのPOS、地下鉄駅の改札口などのすべてに、産業用コンピューターが組み込まれており、「IPCは人々の暮らしのすぐそばにある」と言っても過言ではありません。しかし、アプリケーションの幅が広いため、IPCの機能や仕様は使用場面の違いにより少量多種のニーズがあります。例えば前述したATMとPOSではニーズが大きく異なるため、IPCメーカーは使用場面のニーズに合わせて異なるサイズや仕様のマザーボードを提供する必要があります。
マザーボードを一から開発するのは時間がかかるため、製品発売スケジュールを考慮し、市場における最大公約数の需要を整理して、3つのサイズのマザーボードを企画しました。システムメーカーや各分野のエンドユーザー企業が自社のニーズに合わせて適切な規格を選択し、独自のシステムを構築できるようにしています。以下、サイズの分類に基づき、ATX、Micro-ATX、Mini-ITXの3つの主流な産業用コンピューターマザーボードについて説明します。
ATXマザーボードは305mm x 244mmのサイズで、非常に汎用性が高く、コンシューマー市場でも最も一般的な規格となっています。サイズが大きいことから、I/Oモジュールなどその他の機能部品を最も多く搭載することができるため、十分なスペースがあり、標準品でニーズを満たせる場合は、ATXを選択するとよいでしょう。大きいサイズのマザーボードは、ATXに加えて、330mm x 305mmのE-ATXがあります。これは、現在サイズが最大の産業用マザーボードで、その処理性能と転送速度も最高となっており、主にビッグデータの演算が必要なサーバーシステムで使用される、比較的珍しいマザーボードです。
Micro-ATXは、サイズが244mm x 244mm、幅はATXと同じで、長さが8割程度であるため、道路脇の交通信号制御設備や病院の移動式医療車両など、機器のサイズが大き過ぎず、かつある程度の拡張性を持たせたいシステムに適しています。最も小さい産業用マザーボードは、170mm x 170mmのMINI-ITXです。このタイプのマザーボードは、IoTの最下層でデータの取得や集計を行う機器のように、機能が比較的単一的で、機器のスペースが非常に限られているシステムで主に使用されますが、MINI-ITXはこうした小型機器に組込み、IoTシステムのタスクをスムーズに完了させることが可能です。
産業用コンピューターには、これらのマザーボードのほかに、SBC(シングルボードコンピューター)があり、4インチ、3.5インチ、2.5インチ、1.8インチの大きさがあります。これらの組み込み用マザーボードは、主にオートメーション制御で使用され、必要に応じてスロット数を拡張することができます。
これらの規格は、マザーボードの大きさを規定しています。しかし、適切な産業用コンピューターを構築するには、サイズだけでなく、プロセッサーやI/Oモジュールも考慮する必要があります。プロセッサーに関わるものは比較的複雑であるため、別の記事で紹介し、ここではまずI/Oモジュールについて説明します。
産業用コンピューターと民生用コンピューターで最も違いがあるのがI/Oモジュールです。民生用コンピューターのI/Oは多くが高い伝送効率を要求し、標準の変更速度が比較的早いのに対し、産業用コンピュータは安定性を重視します。このため、RS-232、RS-485、GPIO、USB、HDMI、PCIeなどの産業制御用に設計された多くの通信ポートを異なる部品や周辺機器のI/O標準と組み合わせる必要があり、これらはすべて産業用コンピューターでよくある選択肢であるため、お客様はまずシステムの機能要件を明確に定義したうえで、DFIと相談しながら、最適化したプラットフォームを構築する必要があります。
上述のような産業用マザーボードの主流規格に対し、DFIは代表的な製品を多数展開しています。E-ATXのPR810-C622、ATXのCMS631-Q470E/H420E、Micro-ATXのCMS330-Q470E/H420E、MINI-ITXのCMS101/CMS103などです。ご興味のある方は、DFIホームページで詳細をご覧いただくか、直接お問い合わせください。