今でも使いやすいバス標準であるSATA
今回は最も普及しているバスであるSATAを紹介しましょう。
SATAを語るには、まずHDDを語らなければなりません。HDDは1950年代に既に発明されましたが、そのストレージ容量が大幅に増強されたのは1990年代に入ってからのことです。それに伴い、容量単価が下落し、普及が急速に進みました。大容量、成熟した技術、低コストなどの理由により、今日に至ってもPC、ノートパソコン、産業用コンピューターで最も使われているストレージデバイスです。
HDDに接続するために、コンピュータはコントローラーとディスクドライブ技術を備えなければなりません。そのため、1980年代にCompaq 社とWestern Digital社が設計したPC用ディスクインターフェースは、PCの標準装備となり、1994年に米国国家規格協会により策定されたX3T10規格、Advanced Technology Attachment(ATA)となりました。ATAが発表される少し前に、同じくWestern Digitalにより設計されIDEも既に登場しました。それまでのコントローラーの機能を簡素化することで、コストを大幅に押さえました。厳密に言えば、ATAとIDEは同じ技術ではありません。ATAはコントローラー技術で、IDEはATAに適合するためのディスクドライブ技術です。しかし、両者は高度に統合されたため、その後業界では同義語として使われています。
コンピューター技術の日進月歩に伴い、ATAの問題点が浮かび上がり始めました。1つ目は、パラレル配線の採用により、信号干渉が起こりやすいことで、2つ目は、パラレル配線の占める空間が多いことです。したがって、業界は新しい標準の開発に取り掛かり、2002年にシリアルATA、SATA (Serial Advanced Technology Attachment)が発表されてから、旧来のATAはPATAと通称されるようになりました。PATAと比べ、SATAはノイズの除去に効果的な差動信号システムを採用しています。これにより、SATAの動作電圧は大幅に低減し、シリアル式配線が要するスペースも少ないなどの要因によって、発表されてから間もなくPATAを置き換えました。
帯域幅1.5Gb/sで、転送速度150MB/sの第一世代SATAは、当時において高い帯域幅と高速を誇りましたが、2000年代のコンピューター技術は飛躍的な成長を遂げ、ハードドライブのデータ量とプロセッサーの演算速度の高速化が急速に進んでいたため、SATA組織は2004年と2009年にそれぞれSATA2、SATA3という新しい標準を策定し、帯域幅と速度を大幅に強化しました。SATA3標準では、その帯域幅が6Gb/sに達し、転送速度が600MB/sとなりました。その後も、SATA3にSATA3.1~SATA3.5などの小さな改訂版が発行されました。SATA3の以外にも、SATAは外付けドライブ専用のeSATA (External Serial ATA)とSATAのミニバージョンmSATA (mini-SATA)を策定し、市場におけるさまざまな需要に対応します。
2003年の発表以来20年の歴史を経たSATAですが、帯域幅がより大きい、速度がより早いバス標準の登場(特にPCIe)につれ、その優位性を失いつつあります。よって、SATAは2本のPCIeレーンを使用し、最大速度が16Gbit/sにも達するSATA Express(SATAeとも)を発表しました。SATAeとeSATAは文字が似ているため、混同しないよう注意しましょう。
まとめてみますと、SATAはどちらかというと古いバス標準にあたり、徐々にPCIeに置き換えられていきますが、6Gbit/sのデータ転送速度はまだまだ侮れないので、特定用途の産業用コンピューターで採用されることがあります。DFIも関連商品を取り扱っているため、詳しい技術情報については、DFIの情報チームまでお問い合わせください。